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「調停委員が相手の肩ばかり持つ!?」~調停を冷静に進めるために~ [弁護士業について]

 離婚事件など、家庭裁判所での調停について、弁護士をつけずに本人で調停に臨んだ場合に、「調停委員が相手の肩ばかり持つので困る」という苦情や相談が多いです。

 また、そこまでいかなくても、「調停委員は本当に公平にやってくれているのだろうか?自分ばかり不利に扱われているのではないだろうか?」と疑心暗鬼に陥る当事者の方も多いです。

 そのようなときには、弁護士を代理人として、弁護士同席で調停に臨まれることをお勧めします。理由は、疑心暗鬼をなくし、客観的な目をもって冷静に調停に臨みやすくなるからです。そして、そうした方が、早く良い解決、納得いく解決に結びつくことが多いからです。

 さて、「調停委員が相手の肩ばかり持つ!」こういう風に当事者の方が感じるのには理由があります。

 それは、調停の仕組に原因があります。

 。仕組が悪い、というわけではありません。ただ、「調停委員が相手の肩ばかり持つ」と感じやすい仕組みになっているということであり、そのことを分かって調停に臨めば、比較的冷静に対応できるという話です。

 家庭裁判所で調停を行う主な事件は、離婚や遺産分割です。

 簡易裁判所で調停を行うのは、民事事件全般、つまり、借金の問題でも、交通事故でも、医療過誤でも、ほとんどあらゆるトラブルです。

 離婚などの家庭裁判所での調停事件を前提にして話しますと、調停は通常、

裁判官1名+調停委員2名

が担当します。

 具体的には、

A子さんがB夫さんと離婚したい

ということで離婚調停を申し立てますと、上記のような3名が調停を担当します。

 しかし、裁判所で開かれる期日では、通常は、調停委員2名がA子さんとB夫さんの話をかわるがわる聞いて、お互いの主張を聞いて、それに妥協点を見つけようとします。

 つまりこういうことです。

① A子さんだけが調停室に入る。
  調停委員2名がA子さんから話を聴き取り、A子さんの希望する解決内容を聞く。

  仮に、

 【A子さんの希望】
 1 離婚
 2 子どもの親権
 3 養育費月5万円
 4 慰謝料 100万円(B夫の暴言などで傷ついた)
 5 財産分与500万円(夫婦のマンションがある)

② 次に、B夫さんだけが調停室に入る(この間、A子さんは、待合室で待つ)。
  調停委員2名がB夫さんから話を聴き取り、B夫さんの希望する解決内容を聞く。
  このとき、調停委員は「A子さんは、○○と言っていますが、あなたの言い分はどうですか?」とB夫さんに問いかけます。
 
【B夫さんの希望】
 1 離婚はしかたない。
 2 子どもの親権も仕方ない(母側でよい)。
 3 養育費は月3万円にして欲しい。 会社の業績が悪く、ボーナスなどもカットされそうなので。
 4 慰謝料は払う理由がない(「暴言」というがお互い様。自分も言われた。よくある夫婦げんか。)
 5 財産分与300万円(マンションの価値が下がっている。)

③ 次にA子さんが、調停室に呼ばれ、A子さんが調停委員2名と話をします。

  ここで、調停委員から、伝えられるのは、②の【B夫さんの希望】とその理由です。

  調停委員は、「B夫さんの言い分が全て正しい」と思っているわけではありませんが、とりあえず、A子さんに「B夫さんはこう言っている」ということを伝えます。

  当然、A子さんの当初の希望とは差があります。

  A子さんは、
 「慰謝料払わないなんてひどいじゃないですか!私、『穀潰し』なんて、ひどい暴言を吐かれたのですよ!」
と怒ることもあるでしょう。

  そうしたとき、調停委員は、
 「そうは言っても、B夫さんは、自分こそ『この甲斐性無し』と日頃から馬鹿にされ続けたと言っておられました。言った言わないの話について、どっちが真実と決めつけられませんが、これだけ真っ向から言っていることが食い違っていると、B夫さんが払わないと言っている以上、調停で無理矢理慰謝料を払わせることもできません。」
と説明したとしましょう。
 
  この調停委員さんの説明は、まあ、もっともです。私から見れば、中立の第三者のコメントとしては、常識的と思えます。

 しかし、A子さん本人としては、調停委員さんの言葉について、

「B夫さんの肩を持っているんじゃないか」

と受け取っても不思議ありません。自分の要求について、自分としては体験している事実に基づいて正しいと思って言っているのに、その要求が「B夫さんがこういう以上」という理由で通らない、というわけですから。

 これは、A子さんが短絡的な人だ、ということではなくて、誰でも自分のことだったら(私でも仕事ではなく、自分自身の問題の調停だったら)どうしてもそういう気持ちになる、ということです。
 

④ ここで、A子さんから調停委員が聴き取った内容を、またB夫さんに伝えます。

   例えば、養育費について、

 「B夫さんとA子さんの収入からすると、通常月5万円程度が妥当です。『ボーナスがカットされそう』ということですが、まだ『カットされる』ことが決まったわけではないので、その点を考慮することはできません。もし、本当に『カット』されたら、そのときに事情が変わったことを教えて下さい。額を決め直すことも出来ます。」

と調停委員は、B夫さんに対し説明するかも知れません。

 これは、A子さんの主張を受け容れたというよりは、養育費の決め方の一般原則に従った説明です。

 しかし、これに対して、B夫さんは、

「調停委員は、A子の肩を持っている!」

と感じるかも知れません。

 
 こんなやりとりを調停期日は行い、時間は1回の期日につき大体2時間以内です(上のような仕組から、半分は待ち時間)から、1回では普通終わりません。
 
 たとえば、その期日の終わりに、「では、今度は、お互い、慰謝料の点について歩み寄り出来ないか、次回まで考えてきて下さい。」ということになって、次回、となります。

 期日は、1~2か月に1回くらいのペースで開かれ、何回やるかはケースバイケースですが、調停が成立する見込みがあるならば続けます。3,4回で解決することもあれば、もっと長くかかることもあります。

 
 こんな感じですが、要するに、調停委員は間に入ってお互いを「譲歩させる」ようにして、調停成立にもっていこうとします。
 そして、調停という性質上、それはそれで必要なことです。

 ですから、要するに、

「これこれこういう材料があるから、あなたも譲歩したら?」

ということをいつも言うわけです。

 ここの「これこれこういう材料」は、言われている人にとっては不利な材料です。

 ですから、調停委員は必然的に、当事者に対して、その人にとって不利なことをたくさん言う、ということになります。

 そうすると、当事者としたら、

「調停委員は相手の味方!?」となる、というわけです。


 そういう仕組だということを意識して調停に臨まれたら、意識しないよりはずっと、冷静に調停に臨めると思います。
 
 これで、ある程度冷静に、調停を自分で進められるならばそれで結構です。

 
 そう言われても、「やっぱり、この事件では、調停委員は相手の肩ばかり持つなあ。相手の方が口が巧いから調停委員さんが騙されているのではないかなあ。」という疑念が消えないときは、弁護士をつけたほうが良いと思います。
(現実には、「口が巧い」だけで調停委員が味方になるということは考えにくいです。調停委員は、当事者がどういう風に上手にしゃべるかということではなく、「実際にどういう事実があり、どの事実には証拠があるか」ということを見ていますから。でも、当事者の心理として心配になります「私は口べただから…」と。)

 こういう事件で、弁護士の力は、

岡目八目(これは、誰でも、第三者の目があれば、当事者自身と違って、冷静で客観的な味方がある程度できる。)



法的知識や訴訟になったときの見通しをつける力



当事者に寄り添う力

です。この力を私たちは日々研鑽しなければならないわけです。
 
 いずれにせよ、調停を、冷静に進めていくにあたって、この記事のような調停の仕組を御理解頂ければ、と思います。

                             村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所
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コメント 9

hm

心如さん

 ナイスありがとうございます。
by hm (2012-03-21 10:35) 

ayu15

良いお話ですね。
よんでいて感じたのは批判的コメント(場合によって攻撃的な)をよせてくるかたは片方の被害者心情??なことがちょくちょくあるように思えます。
うちは両方少しは救いをと思って「勝手に調停」して、
相手に味方していると取られるかも?



by ayu15 (2012-03-25 11:06) 

hm

shiraさん、ナイスありがとうございます。


by hm (2012-03-26 15:54) 

hm

あゆさん

ナイスとコメントありがとうございます。
円満に解決するには、調停委員も代理人となる弁護士も、粘り強く、当事者の心に寄り添う必要があります。
by hm (2012-03-26 15:56) 

NO NAME

自分の親がまったく同じ相談を私にしてきたのでとても共感を得られました。
なるほど、相手の肩を持つ話し方をするのが調停員なわけですね
by NO NAME (2014-04-29 20:40) 

照っちゃん

非常にわかりやすい内容でした。ナイスです。
実は、以前父が会社を退職したあと調停委員をしてまして、家で大量の調べものをしてたのを思い出しました。父は多くを語りませんでしたが、両者の敵と思われることで、妥協点を見出す職ようなかんじですね。調停や裁判になる場合、両者被害者意識を持ってしまっていることが多く、妥協点を見出すのにいろいろな感情が出てくるらしいです。でも最終的に妥協点を見出せて双方が納得することが出来たときには喜びも大きいそうです。
by 照っちゃん (2014-12-26 10:10) 

初めまして、さとと申します。

私は、今求職中(生活保護)です。ある簡易裁判所で、敷金返還請求 調停申し立て人です。(建築施工管理経験者)勿論弁護士さんつけてます。相手方(大家)、弁護士さんつけてません(一級建築士)。新築から25年経過し、その後入居、15年住んでいました。国土交通省のガイドライン知りました。弁護士さんに話したら、ガイドラインに添って請求してるとの事。内容は、床下の腐れて直した件。調停委員は、相手方に着いています。私はかなり不満。この場合、どの様に進めれば良いですか アドバイスお願い致します。
by 初めまして、さとと申します。 (2014-12-29 04:55) 

民生委員のお世話になり、労災年金と奨学金で大人になった調停委員

どうしたら同情を得られるか、
相手がいかに横暴で傲慢か、自分がいかにかわいそうな立場であるか、
泣きをどこで入れるか、
服装はどうあるべきか、
調停委員がエリートボケじじと苦労を知らない高ビーババの集団で、小細工で心を掴めると思われているブログが多く悲しくなります。
その点、上村様のコメントは、よく観察なさっていると感心しました。
(あ。。。こうやって簡単に感心するからダメなのね)
by 民生委員のお世話になり、労災年金と奨学金で大人になった調停委員 (2015-05-30 09:44) 

no name

もうずいぶん前になりますが、離婚調停を申し立てました。
小学生の長男と、園児の長女を連れて実家へ帰りましたが、第1回の離婚調停数日前に夫に長男を連れ去られました。
離婚調停ではもちろん親権で揉めました。
何度目かの調停で兄妹を会わせることになり、お互いが子供を連れて行くという約束になりました。
私は娘を連れて家庭裁判所へ行きましたが、夫側は夫、長男、夫の両親が来ていました。
祖父母との面会の約束はしていないと私が言うと、調停員が夫に祖父母を連れて来たら?と言っていたそうです。
私にはそのような言葉はありませんでした。
夫は地元民、私は他市民。
夫側の肩を持っているとしか思えませんでした。
閉鎖的な場所でした。
山鹿市は。
by no name (2016-04-10 02:59) 

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