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RadiCro 第6回  [法律案内]

私が担当するインターネットラジオ番組の4月号です。

 こちらから ↓
 http://www.kobeseaside-lawoffice.com/radio

 今回は、

・2:30ころ~ ニュースのツボ「共謀罪について」
・19:40ころ~ 法律相談「遺産相続について」

です。
  
 前半は,今国会で争点になっている「共謀罪」。
 みなさんは,賛成?反対?
 「警察に強力な権限を与える」ことが犯罪防止に役立つかも知れない,という反面,一般市民も(私もあなたも)監視される対象になるかも知れない(それをどれだけ甘受するか),という視点からこの法案を考えてみよう,という話。

 収録途中,スタジオセットの設置型マイクの先端部分を私が誤って引っこ抜いてしまうというハプニングがありました(それで音声が乱れています)。
 
 後半は,「遺産分割」(相続)の問題です。
 これはオーソドックスな事例を取り上げました。
 当事者同士で話し合いができない場合は,通常,家庭裁判所の調停を利用します。
 そこで行われる遺産分割の基本的考え方を解説しました。
 不動産はどう分けることが多いか?など。


   神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹


裁判所と弁護士会の共同企画~交通事故研修会 [法律案内]

 先日(3月末),私が所属する兵庫県弁護士会で

交通事故訴訟の研修会

がありました。
 弁護士向けの研修会です。

 私は,この研修会のパネルディスカッションで,「被害者側弁護士」の立場でパネリストを務めました。

 この企画は,弁護士会と裁判所が共同して企画したものです。

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訴訟は本人で出来るか? [法律案内]

 私が司法修習生のころ、指導担当をしていただいた弁護士の方から勧められて読んだ本(の最新版。初版は20年以上前だと思われる)です。


訴訟は本人で出来る

訴訟は本人で出来る

  • 作者: 石原 豊昭
  • 出版社/メーカー: 自由国民社
  • 発売日: 2015/03/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 民事訴訟の手続について、とても分かりやすく書かれた本です。
 司法修習生はプロの卵なのに、「素人向け」の本なんか読んでいるのか!と思われるかも知れません。
 が、しかし、弁護士になる前の司法修習生が読んでもとても勉強になる、というより、通常の民事訴訟の手続きを解説したプロ向けの本よりも短時間で読めて、かつ、ポイントは押さえてある、という良書です。
 今でも、司法修習生の方や、民事訴訟の手続の大筋について勉強したい法律事務所事務員の方などにもオススメできる本だと思います。
 「法律の『プロ』『セミプロ』でも、まずはこの本から」という感じです。

 もちろん、実際に、弁護士が「この本を見ながら仕事をする」なんてことはまずないでしょう。
仕事をするときにはもっと「格式張った」専門書を参照することになります。
 仕事をするときに参照するのは、その仕事に関係する部分だけですので、「分厚い本」の一部分を読むことになります。

 一方、まだ具体的な仕事以前の段階での勉強ならば、「一部分を参照する」のではなく、「全体を読む」ことになるでしょうから、これくらい「噛み砕いた本」でもいいですし、「分厚い本」よりも「薄い本」のほうが取り組みやすいですね。

 まとめると、

仕事用 → 分厚い本が良い
勉強用 → 薄い本が良い

ことが多いですね。これはどの分野でも言えることでしょう。

 
 さてさて、今日のブログのタイトルの問い「訴訟は本人で出来るか?」の答えは、紹介した本のタイトル通り、

訴訟は本人で出来る

でOKだと思います。

 ただし、この答えは、

パソコンは自分で作れる

家は自分で建てられる

コーヒーは自分でいれられる

受験勉強は塾や予備校に行かなくてもできる

などと同じような意味です。

 訴訟も自分で出来ないことではないので、状況によって「自分で」「弁護士をつけずに」やるという選択肢はあります。
 
 そのメリットは、

・ (誰に意見されることもなく)自分の思うとおりにやることができる
・ 弁護士費用がかからない

という点です。

 デメリットは、

・ 書面を作成するなど、手間暇がかかる。
・ 訴訟のルールなどを勉強しなければならない。
  訴訟のルールなどを知らないために不利になることもある。
・ 裁判の期日に自分で出て、連絡は直接自分が受けるのでストレスが大きい。
・ やっていることがおかしくても、(弁護士のアドバイスがないので)気づきにくい。
・ 孤独な戦いになる。

という点です。

 これを裏返すと「弁護士に事件を依頼することの意味」になります。

・ 訴訟対応を弁護士に任せて、自分は本来の仕事などに専念できる。
・ 弁護士が事件に関する連絡「窓口」になる。紛争の相手と直接話をせずに済む。
・ 方針について、弁護士のアドバイスが得られる。
・ 専門家と一緒に話し合い、作戦を立てて戦える。

 これらのことがあなたにとって重要かどうか、「費用を支払ってでも弁護士に依頼する」値打ちがあるかどうか?を考えるということになります。

 ということですから、私たち弁護士は、

・ 「この人になら任せられる」という存在(事件を解決する能力、人格などが関係する)
・ 「この人となら一緒に戦っていける」という存在(コミュニケーション能力、色んな人の立場を理解する力・想像力などが関係する)

であることに値打ちがあるということになります。
 弁護士は、こういう存在であるように日々研鑽し続ける必要がある、良い心身のコンディション作りをし、法律関係はもちろん社会に関する色んな面の勉強をし続けなければならない、ということになります。

 先日司法試験の記事を書きましたが、試験にパスして資格を得たら「依頼する値打ちのある弁護士」になれるわけではありません。
 試験にパスしてから、「依頼する値打ちのある弁護士」になるように、また、そういう弁護士であり続けるようにいつまでも努力し続けなければならない、というのが弁護士の仕事です。
 
 以上は、私が司法修習生のときからずっと考えていることですが、初心忘るべからずで、これからも努力を続けていきたいと思っています。


神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹



マーサズ・ヴィンヤード島 [法律案内]

2月25日、私が代表幹事を務めるシルバー法律研究会で成年後見シンポジウムを行いました。

 基調報告で「障がいのある人たちの権利を保障するために」と題して、神戸女子大学健康福祉学部教授の植戸貴子さんから話を聴きました。

 植戸さんの話の中で印象に残ったのが、「マーサズ・ヴィンヤード島の聴覚障害者」のエピソードから学ぶ、障がいの「医学モデル」と「社会モデル」の話でした。

 マーサズ・ヴィンヤード島は、アメリカのケープコッドの南海岸から約3.5マイル (6 km)のところにある島(と言ってもどこやねん?という感じですが、ニューヨーク、ワシントン、ボストンなどからも近い距離にある島)で、アメリカの観光地、高級別荘地だそうです。
 一度は私も行ってみたい!

 この島について、こんな本があります。この島のエピソードから、「障がい」とはなんなのか?の本質を考える話です。


みんなが手話で話した島

みんなが手話で話した島

  • 作者: ノーラ・エレン グロース
  • 出版社/メーカー: 築地書館
  • 発売日: 1991/11
  • メディア: 単行本



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「預貯金も遺産分割の対象に」(平成28年12月19日最高裁判決) [法律案内]

 相続問題について、とても重要な最高裁判決がありました。

 これまでの判例(ルール)を変更するものです。

 平成28年12月19日最高裁大法廷決定
 裁判所ホームページ http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86354

 この最高裁判決はニュースでも大きく取り上げられました。
 新聞なども見出しも、このブログのタイトルとだいたい同じものでした。

 一般の方で、争いのある相続問題などを経験していない方はピンと来ないかも知れません。

 まず、このブログのタイトル

「預貯金も遺産分割の対象に」

について。このタイトルを見て、

 えー!?預貯金って遺産じゃなかったの?相続しないの?

と思う人もいると思います。これは誤解なので、ちょっと問題点を整理しなければなりません。

 まず、

今も昔も、

 預貯金は遺産です。相続されるものです。
 

 これは常識として皆さん理解されていることと同じだと思います。
 
 ただ、この判決の出る前は、

 「遺産分割」の対象にならなかった 

のです。
 「遺産分割」というのは、話し合いの上で遺産をどう分けるか決めて分割することです。
 で、どうだったかといえば、

 相続が発生したとき(だれかが死亡したとき)に、自動的に法定相続分に応じて分割されることになっていた

のです。
 要するに、預貯金については

 相続人の間で話し合う必要がなく、たとえば相続人が兄弟2人だったなら、自動的に、残高の1/2は兄のもの(弟も同じ)となっていた

ということです。

 そういう意味で、平成28年最高裁判決以前は、例えば、遺産が

A 家と土地

B 現金

C 預貯金(1000万円)

とあったなら、

AとBは遺産分割の話し合いをして分ける必要がある

C預貯金だけは、相続発生したら(誰かが亡くなったら)、自動的に「兄500万円、弟500万円」に分かれる

ということになっていました。ただし、相続人(ここでは兄弟二人)が「預貯金も含めて遺産分割の話をしよう」と合意すれば、預貯金も遺産分割協議の対象に含めて良いということにはなっていました。

 今回の最高裁判決(平成28年)では、この取扱が変わって、上の例だと

A不動産、B現金、C預貯金も全て含めて、遺産分割の話し合いの上で分け方を決めて下さい

ということになります。
 その方が実態に合っているはずだ、という考えのようです。

 確かに、私たち弁護士が相続についての仕事をする中でも、預貯金は、上手く金額を調整するために使うのに便利な財産だと感じます。

 つまり、

不動産など ・・・ 分けにくい。
        誰かが住んでいる、仕事に使っているなどの事情がある琴も多い。  
        多くの場合、ケーキを切るように1/2、1/3と分けられるものではない。

預貯金など ・・・ 「数字」に従って、どのようにでも分けることができる。
        利害調整に便利。

というわけです。
 ですので、「預貯金も含めて遺産分割協議をする」というのが実態に適っている場合は確かに多いのです。

 ただ、一方で、この最高裁判決では補足意見として、問題点も指摘されています。

 つまり、これまでなら相続開始後すぐに少なくとも一部は相続人の誰でも預貯金を引き出しすることができた(自分の相続分は引き出せた)のに、今回の最高裁判決によればそれは出来なくなります。
 相続人がもめていて遺産分割協議に時間がかかりそうな場合などです。

 その場合に、亡くなった人の預金が全く払い戻せないために、相続人たちが、各種支払(亡くなる直前の入院費など)や葬儀費用などの支払いに困ることにならないか?という問題です。
 これは十分あり得る問題です。

 これに対しては、最高裁判決(補足意見)の中では、一部の預貯金を必要な人に「仮に分割する」仮処分をする手段(家事事件手続法200条2項。仮分割の仮処分)の活用が考えられると書かれています。
 とはいえ、仮処分手続をするのはなかなか大層なことなので、実際には、一時的に相続人の誰かが自腹で立て替えて(最後の入院費などの)支払をするなどのことも多くなりそうです。

 神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹

 
 
  

民事裁判 「判決日」には何をする? [法律案内]

 弁護士に依頼して民事訴訟(裁判)を起こしました。

 たとえば、AさんがBさんに対して貸金500万円を支払え、として訴えた裁判だったとします。
 Bさんは「そんなの借りた覚えがない」として争っていたとします。
 
 裁判が最終盤まできて、ある期日で、裁判所が

「審理を終結します。
 判決言渡期日は平成28年12月8日午後1時です。」

と言いました。

 さて、この「判決言渡期日」には何が行われるでしょうか?
 この日には、「誰が」「何を」するでしょうか?
 Aさんはどうすればいいのでしょうか?
 Aさんの弁護士は何をするのでしょうか?
 「判決言渡期日」の前後について、気をつけなければならないことがあるでしょうか?

 これは、弁護士に依頼して裁判を進めた人が、丁寧に弁護士から説明を受けないと、結構分からなくて「どうすればいいの?」となりがちなことなので、今回の記事で説明させていただきます。

1 「判決言渡期日」には何が行われる? 

 テレビで見ると、民事裁判でも大きなニュースになる事件(例えば、国に対して薬害などを訴えた事件など)では、

「勝訴」とか
「不当判決」とか

大きく書いた紙を持って、弁護団の若手弁護士が裁判所から出てくる映像が、多くの方の「判決言渡期日」のイメージではないでしょうか。

 これは特殊な例です。

 通常の裁判の場合は、裁判所が、「主文」といって、判決の結論部分だけを読み上げて終わります。

「1 被告は、原告に対し、金500万円及び平成26年5月24日より支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。」
「2 訴訟費用は被告の負担とする。」
「この判決は仮に執行することができる。」

という感じです。
 
 そして、多くの裁判では、「判決言渡期日」には当事者も弁護士も出頭しないことがほとんどです。(これは刑事裁判との大きな違いで、刑事では、被告人、弁護人、検察官が必ず出頭して判決言い渡しがなされます。)
 
 ということは、民事裁判では、

裁判官が、当事者がだれも出頭いない状態、いわば、観客ゼロの状態で、判決を読み上げることが多い

ことになります。経験のない人には、とても空しい絵に思われるでしょう。
 双方の弁護士もなんてやる気がないの?という感じを抱くかも知れません。
 誰も出頭しなくても「言い渡し」はしなければなりませんから、裁判所は判決の主文を読み上げます(これは省略しません)。

 当事者が誰も居なくていいのか?と思いますが、次の条文の通りで問題ありません。

民事訴訟法251条2項
 判決の言い渡しは、当事者が在廷しない場合においても、することができる。 
 
2 当事者は?弁護士は?当日なにをする?

 上のようなことなので、判決言渡期日に当事者は出頭しなくても構いません。
 例でいえば「Aさん」は出頭しなくても構いません。

 でも判決がどうなったか気になるじゃないか!

というのは当然です。もちろん、出頭しても構いません。

 じゃあ、肝心の「判決言渡期日」に弁護士は裁判所にも来ず、何もしないの?というのですが、「判決言渡期日」における弁護士の仕事は次のとおりです。

 裁判所まで行っても、実際に聴くことができるのは「主文」だけです。
 「主文」(結論)だけでは、なぜ裁判に勝ったのか、負けたのか分かりませんし、判決の理由を読まないと「次」(註 後で説明します)に向けてどう動くべきかの判断もつきません。

 ですので、要は当日、判決の結果さえ把握できればいいのです。
 多くの場合、弁護士は、事務所から裁判所に電話をかけ、

「本日午後1時言い渡しの○○事件の判決内容を教えて下さい。」

と尋ねます。そうすると、裁判所書記官が、判決内容を教えてくれます。これは普通のことなので、「横着しやがって。法廷まで、聴きに来んか!!」と怒る書記官はいません。

 そうして、当日に判決内容を聴いて、依頼者に電話などで伝えます。
「地裁で、あなたの請求が認められましたよ。」
「残念ながら判決は当方の負けでした。」
と。

 後日、判決書ができあがったら、弁護士(多くは事務員)が裁判所に取りに行くか、事務所に送ってもらいます。
 どちらの方法でも、弁護士(又は事務員)が受け取ったら、「判決書」が「送達」されたことになります。
 この「判決書」を見て初めて、勝った・負けたの理由が分かりますし、判決が納得いくものか、それとも間違った判決なのか、ということの検討が出来るようになります。

 以上のようなこと(実務の通例)は、普通の人は知りませんから、弁護士が当日のことを事前によく説明しておいたほうがいいです。

 私が受けた「他の弁護士の苦情相談」では、

「○○先生は、一番肝心な日に裁判に来なかった。どういうつもりか。信じてついてきたのに、残念で仕方が無い。」

という訴えがありました。もちろん、ここでいう「一番肝心な日」とは「判決言渡期日」のことです。
 説明されなければそう思うのも無理はありません。
 当事者にとっては「運命が決まる日」に他ならないのですから。
 私は、その方に、上で説明した「判決言渡日とはどういうものか」と、その日、弁護士はどういう仕事をするのか?を説明しました。
 そうすると、「なんだ、そうだったの。」と納得されました。が、「それならそうと説明してくれないと、分からないじゃない!心配したじゃない!」とも仰っていました。
 もっともです。

3 判決言渡日前後に気をつけなければならないこと

 何と言っても、

判決言渡日の後2~3週間は、なるべく弁護士と連絡が取りやすい状態にしておくべきだ

ということです。

 大事なのは、判決の「次」の準備です。

 つまり、

判決で負けた場合に不服申立をするか?

という点です。

 例えば、

神戸地方裁判所での判決に対して、負けた場合に、大阪高等裁判所に「控訴」するか?

です。

 まあ、これは「判決が出て、判決文を読んで、その内容次第で考える」でよいのですが、うっかりしてはいけないのは控訴期間です。

民事訴訟法285条 控訴は、判決書(略)の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければならない。

 まず基礎知識として「2週間」です。
 この期間を過ぎてしまったら、泣いても笑っても、判決は「確定」してしまいます。

 依頼している弁護士が控訴する場合に、通常は、次のものが必要です。

(1) 控訴状    
 これは弁護士ならすぐに作れます。
 難しい事件でも控訴の理由を細かく書く必要はありません。
 「控訴する」趣旨を書いて、控訴の理由は「追って」と書けば良いです。

(2) 委任状    
 控訴審(例では高等裁判所)用の委任状が、第1審(例では地方裁判所)用に提出したものとは別に必要です。

(3) 控訴費用
 控訴状に印紙を貼って出さなければなりません。
 また、所定の郵券も納めなければなりません。

(4) 控訴審の弁護士費用
 これは弁護士との間の取り決めによります。

 上の(1)~(4)が揃わなければなりません。
 (3)(4)はお金です。「判決言渡期日」のあたりには、控訴する可能性がある場合に、必要なお金の準備をしておかなければならないということです。
 
 (2)は委任状に名前を書いてハンコを押すだけですが、弁護士と依頼者がなかなか連絡を取れないケースもたまにあります。
 長期出張、海外旅行、病気療養などで2週間連絡が取れず委任状ももらえなければ、場合によってアウトです。
 ですので、判決言渡期日付近(特にその後2週間)のスケジュールは確認しておいた方が良いです。
 委任状のこともありますが、2週間の間に控訴すべきかどうかを相談しなければなりませんから、弁護士と依頼者が連絡を取りやすい状態であるようにしなければなりません。
  
 「2週間」について細かく説明すると「判決書の送達を受けたとき」から「2週間」です。
 これは、本人が判決書の写しを弁護士からもらったときではなくて、「弁護士が裁判所から判決書の送達を受けたとき」です。
 2週間の数え方ですが、初日は数えません。翌日から2週間。
 つまり、

 12月8日  金曜日 判決言い渡し
 12月12日 月曜日 弁護士事務所に判決書が送達されてきた

という場合なら、翌13日から指折り数えて14日目、すなわち、26日月曜日が控訴期間満了の日ということになります。
 弁護士の中には、「月曜日に送達があって、控訴がなく、次の次の月曜日(同じ曜日)が経過すれば判決は確定する」という風に頭を整理している人が多いようです。

 結構あっという間なので、この期間は、弁護士と密に連絡を取れるようにしておいてください。

 控訴する場合は、何はともあれ、期間内に控訴状を出す(弁護士に出してもらう)のです。
 理由を考えるのは後からで構いません。

民事訴訟規則 182条
 控訴状に第一審判決の取消し又は変更を求める事由の具体的な記載がないときは、控訴人は、控訴の提起後五十日以内に、これらを記載した書面を控訴裁判所に提出しなければならない。

というルールになっていて、つまり、

とりあえず2週間以内に控訴状

理由はその後50日以内(これは随分余裕がある、と言っても結構すぐに来ますが…)に、しっかり練って書いて出せば良い

という仕組みです。

 ですので、例えば第1審(地方裁判所)で弁護士を付けずに裁判をやって負けたとして、
「どうしよう!控訴期間は2週間しかない。2週間で事件を初めから分かってもらって、バッチリ準備して、なんて頼める弁護士なんかいないんじゃないか…」
と考えて不安になってしまう必要はありません。
 不服があってこのまま裁判を終わらせたくないなら、ともかくも「控訴」するしかありません。
 その後、弁護士をつけるならつけてじっくり作戦を一緒に考えてもらう、ということでよいのです。

 最後は、控訴の手続についての説明になりましたが、「判決言渡期日」の前にある程度は控訴の手続についてもイメージを持っておいてもらったほうが安心でしょうね。

 控訴審(多くは高等裁判所)では何をする?については、また機会があれば書こうと思います。

  神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹



 

養育費・婚姻費用の算定表について、日弁連が新しい提言 [法律案内]

 11月15日に、日弁連(日本弁護士連合会)が、離婚後の養育費などについて、「新しい提言」をしました。
 
日弁連ホームページ 養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2016/161115_3.html

 養育費・婚姻費用については、私の過去の記事で取り上げています。

「養育費・婚姻費用の算定表~なぜ表で決めるのか?」
http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2009-05-14

「養育費が払われない場合、どうすればよいか?」
http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2012-04-27

 「なぜ表で決めるのか?」では、「表で決める」ようになった以前の時代(2003年ころ以前)には養育費・婚姻費用を決めるのに時間がかかりすぎていたことなどを説明しています。
 「表」がなかった時代は、調停などで、養育費等を正確に計算するための資料として、細かい領収証などを当事者に提出させたりしているうちに、何ヶ月も経ってしまっていました。
 しかし、養育費や婚姻費用(別居中の生活費)は、毎月必要な生活のお金ですから早く決めてもらわないと困ります。実際、「細かな領収証がどうとかで何ヶ月も待たされてはたまらない」という声が上がっていました。
 そんな状況を打開するのに、「表」ができた(2003年)ことが大変役に立ったのでした。
 これのおかげで、養育費や婚姻費用を、(以前よりはずっと)素早く決めることができるようになりました。救われた人も多かったと思います。
 余談ですが、この「表」ができた2003年は星野監督のもとで阪神タイガースが18年ぶりに優勝した年でした。

 さて、それから時が経つこと13年…

 この「表」について、もっと良いものにできないか、という動きが出てきました。

 2003年のときは、とにかく実際の調停などで「使える」「表」を作る、ということに意義がありました。はじめての「使える」「表」という意味では、このとき作られた表はよくできたものだったと思います。

 今度は、その「表」をさらにきめ細やかに、夫婦、父・母・子の生活に実態に合うように作りかえるということが課題になってきました。 

 主な点としては、以前の表では、収入から生活費以外に必要な出費として差し引く金額の概算の仕方の問題で、支払われるべき養育費の金額が実態よりも低めに出やすい傾向がある、ということが指摘されていました。
 今回の日弁連提案の「新算定表」では、その問題点について必要な改善をして、また、小学校入学前と入学後の養育に必要な負担の違いに考慮してよりきめ細かな「表」の分け方がなされています。
 また、表を作る上で基礎にする統計資料も最新のものが採用されました。

 その結果、代表的な例

 離婚後の養育費
  父 : 年収400万円
  母 : 年収175万円、子ども15歳と同居

の場合は、「現算定表」(2003年)では月4万円だが、日弁連提案の「新算定表」では月7万円になる、と試算されています。

 新聞ニュースなどによると、「現算定表」と比べて養育費の額が1.5倍くらいに増額される例が多くなるといわれているようです。

 もちろん、これは、養育費を払う側にとってはきつい、ということでもあります。

 ただ、上の例でいうと、おおよそ

父親の月収は平均して33万円(400万円÷12)
母親の月収は平均して15万円(175万円÷12)

子どもの生活費を月に約10万円 として、父7万円、母3万円負担する 

ということになります。
 こう考えると、まずまず妥当な線ではないか、これまでのように父4万円の負担ならば母子側は相当しんどかったのではないか、と思えます。

 さて、今の段階では、日弁連が新しく提言をした、という段階ですから、まだ、すぐにこの「新算定表」が調停などで採用される、というわけではありません。

 ただ、これからは、私たち弁護士もこの「新算定表」提言があることを意識して活動することになりますし、家庭裁判所の裁判官・調停委員もやはり意識するでしょうから、これからの調停・審判にも影響があると思います。

 というわけで、 養育費などの「算定表」がこれからどうなるか? は今とてもホットな課題となっています。

神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹

民法改正されたら~法定利率は3%からの変動制 [法律案内]

 近い将来、民法は全面的に改正されることになりそうです。

 既に平成27年に、法制審議会で改正の要綱案が決定されています。
 http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900244.html

 以前、私の日記で、法定金利が5%という破格の高率であることについて記事を書きました。
「金利年5%!!~民事法定利率の話」
 http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2012-07-06
 特に、交通事故の死亡・後遺障害事案について、将来の逸失利益(その人が事故に遭わなければ得られたであろう一生の収入)の計算で、法定金利5%が被害者に不利に働いている、ということを書きました。

 金利5%というのは今の経済情勢(長く続く超低金利、また、かつてのような経済が急成長する状況は考えられない)ことからして、余りに実情からかけ離れています。
 また、それを前提に利息請求することも、また、死亡事故などで逸失利益の計算に「中間利息控除」として5%を使えば(5%分の金利を「天引き」して賠償額を決めると)被害者が大きな不利を被ることなどから、不都合があります。
 
 このように5%は実情に合わないという共通認識から、民法改正では、

1 まず法定金利(契約で金利を決めなかった場合の貸金などの金利)を初期設定として3%とする。

2 その後、3年ごとに、過去5年分のデータ(正確に言えば、6年前~2年前の短期貸付の平均利率)をもとに、1%単位で見直しをする。

という変動制をとる方針が決まっています。
 ただし、変動制について、細かい説明は省きますが、相当大きな実勢金利の変化がない限りなかなか3%は動かない仕組みになっています。
 なので、民法改正後、当分は法定金利3%になる可能性が高いといえます。

 また、民法改正要綱では、交通事故の死亡・後遺障害事案での逸失利益の計算(中間利息控除)でも、上記の通り定まる「法定利率」を使うと定められています。(現在の民法は、中間利息控除について「法定利率」でしなければならない、とは書いていません。最高裁判決は「法定利率で行う」としています。)

 ですので、現在の法定利率5%で「中間利息控除」をして逸失利益(賠償金の大きな部分)を決めるよりも、3%のほうが被害者にとっては有利になります。
 「中間利息控除」として減らされる金額が少なくてすむからです。
 それでも、年利3%でお金を現実に運用することは出来ないので、「中間利息控除」が被害者に不利に働くという点が解消されるわけではありませんが。

 なお、法定利率はあくまで、契約で金利を決めなかった場合の話です。

 ですので、例えば「AさんがBさんに対して金100万円を貸した」場合に、

1 契約書に金利が明記してある(たとえば、10%、1%、利息なし、など)場合
   →契約書に書かれた金利になります。

2 金利の約束がない場合(決めなかった場合)
   →現在は               5%
    民法改正されたら       当分は3%

となるということです。

 民法改正は全面改正になりますので、この他にも、色々変わります。
 民法というのは、取引上の基本ルールを定めた法律ですので、改正は私たちの暮らしに影響することがあります。

 他の変更点についても、折に触れてご紹介していこうと思います。

神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹








 

『天然パーマでいじめられ「縮毛矯正」した娘に学校が「戻せ!」、そんな対応はアリ?』 [法律案内]

 弁護士ドットコムの記事『天然パーマでいじめられ「縮毛矯正」した娘に学校が「戻せ!」、そんな対応はアリ?』にコメントしています。
 興味のある方はどうぞ↓

https://www.bengo4.com/shohishahigai/n_4772/
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160616-00004772-bengocom-soci

 限られた字数の記事の中なので、どうしても言葉足らずになってしまっていますが、奇抜な格好をしよう、というのではなく普通に学校に行くためにストレートパーマを当てる、ということならば、学校も柔軟に考えてあげればいいのにな、というところです。

 それでも、私が高校生だったころ(20数年ほど前)と比べれば、私の身の回りで見る限りは、今の高校生の方のファッションは「上品」になったと思います。

 茶髪、金髪への染毛の人、特に極端に明るい色の人などの割合は激減している。

 パーマも減った?特に、ドレッドとか、「とがった」感じの髪型は減った。

 でも、多くの人は「さりげなく」おしゃれ。黒髪、短髪でもおしゃれ。

 今の子たちは格好いいな、と思いつつ、「一つ上の世代」としては、中高生なのにまとまり良すぎでは?もうちょっと「はみ出し」てみてもいいのでは?と思ったり、奇妙な種類の「老婆心」が湧いてくる今日この頃です。
 
 各学校の校則の意義は否定しませんし、ルールを守ることも大切だと思います。
 でも、(弁護士ドットコムの事例は全然違うけれども)たとえ「奇抜な格好をしてみたい」ということであったとしても、そういう魂の自由さそのものはかけがえのないものです。その子の色んな力を伸ばす原動力です。
 個々の生徒の内から湧く力、魂の自由さをできるだけ損ねず、かつ、ルールのある社会で生きていくことも学んでいけるようにする。
 こういうのが学校の役割、先生の役割だと思います。想像すると、色々大変だろうなあ、体力・気力が要るだろうなあ、と思います。頭が下がる思いです。

       神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹
 
  


最高裁判決~「花押」では遺言に必要な「押印」と認められない [法律案内]

 最高裁は、平成28年6月3日の判決で、「花押を書くことによって、自筆証書遺言の方式としての『押印』の要件を満たしたとはいえない」という判断を下しました。

 花押は「かおう」と読みます。
 私もよく知りませんでしたが、要するに、漢字を崩した手書きのサインであるとのことです。
 ネットで検索すると、戦国武将や歴代首相のものもあって、それはそれで格好いいもののようです。

 ところで、遺言のうち、公正証書で作成するものではなく、自分で書く自筆証書遺言については、民法で方式が厳格に決まっていて、方式に従っていないものについては効力がありません。
 
 民法968条1項には

 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない

と定められています。
 この「印を押」す、というのが、「花押を書く」でもいいか?という問題です。

 最高裁は、ダメだ、という判断を下しています。
 
 ここで、この最高裁の判断を題材に、法律問題を考えるときに役に立つ考え方の一つを紹介してみたいと思います。

 それが、

「形式」面と「実質」面を分けて考える


ということです。
 これは、法律問題に限らず、政治の問題や人々の間の利害調整や色んな問題を考えるときの一つの視点です。

 法律問題で言えば、

「形式」 法律の条文や、条文に書かれた文言(もんごん)、手続が正しいか、など
「実質」 法律の目的、趣旨(「こころ」のようなもの)、価値判断(「何を大切にするか」)など

というイメージです。

 それでは、今回の最高裁判決の一部を下に引用します。

(引用開始)
花押を書くことは,印章による押印とは異なるから,民法968条1項の押印の要件を満たすものであると直ちにいうことはできない。
そして,民法968条1項が,自筆証書遺言の方式として,遺言の全文,日付及び氏名の自書のほかに,押印をも要するとした趣旨は,遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに,重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ(最高裁昭和62年(オ)第1137号平成元年2月16日第一小法廷判決・民集43巻2号45頁参照),我が国において,印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。
以上によれば,花押を書くことは,印章による押印と同視することはできず,民法968条1項の押印の要件を満たさないというべきである。
                                (引用終わり)

 この引用部分を題材に、「形式」「実質」を分析してみます。

 まず、「全部形式論じゃん!」という意見を持つ人もいると思います。
 もちろん遺言の方式の話ですから、基本的に「形式論」の要素があります。
 ただ、その中にも、「形式」面にスポットを当てた部分と、「実質」面にスポットを当てた部分があり、これを分けて読めれば、判決文の読み方がグッと違ってきます。

1 まず、この部分は「形式」面の検討です。

「花押を書くことは,印章による押印とは異なるから,民法968条1項の押印の要件を満たすものであると直ちにいうことはできない。」

 「形式」において○か×か。
 少しわかりにくいですが、「『直ちに』いうことはできない」は△~×という感じです。
 「花押を書く」というのを、「押印」と解釈するのは、絶対にない解釈とは言えないが、普通にそのように解釈されるものでもなかろう、というくらいの判断です。

2 で、後の部分は「実質」面の検討になります。

「そして,民法968条1項が,自筆証書遺言の方式として,遺言の全文,日付及び氏名の自書のほかに,押印をも要するとした趣旨は,遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに,重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ(最高裁昭和62年(オ)第1137号平成元年2月16日第一小法廷判決・民集43巻2号45頁参照),我が国において,印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。」

 ここは、なぜ、自筆証書遺言に「押印」が必要か?を論じています。
 「押印」を必要とした法の趣旨「こころ」です。
  
「重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させる」というのが日本の慣行だ、だから自筆証書遺言には「押印」が必要だと民法が定めているのだ、ということです。
 民法は、重要文書は「ハンコ押して完成」という日本の慣行を重視している、ということです。

 ですが、日本で「花押を書くことによって文書を完成させるという慣行」があるとは認め難い、から、民法968条1項の趣旨(こころ)から考えてもやっぱりダメ、という判断です。
 「花押」というサインをして完成、というのは、ハンコと違って、日本での一般的な慣行とは言えない、という判断です。
 判決文には書いてありませんが、そもそも「花押」を知らない人も多いわけで、日本全体で一般に通用しているとまで言えないし…という感じでしょう。

 以上の通りで、「形式」面でみた場合は△~×という感じで、「実質」面でみると×、結局、花押を書くことでは自筆証書遺言に必要な「押印」とは認められない、という判決になっています。

 上にも書きましたが、

「形式」面、「実質」面を一旦わけて、両方考えてみる

というのは、物事を考える上で役に立つ見方なので、法学部生の皆さんはもちろん、そういう思考方法に馴染みのない方は少し意識してみられると、ニュースを見るのでも、日常の仕事でも新しい発見があると思います。

 なお、世の中の進歩や変化の中で、難しい、微妙な問題になることの多くは、例えば、

「実質」面で考えると ○ 

だが、

「形式」面で考えると ×

というように、「実質」からのアプローチと「形式」からのアプローチで結論が反対方向に行きそうな場合です。

例えば、試験で持ち込み許可物件として

「ボールペン、鉛筆、消しゴムに限る」

とあったとして、では

「シャープペンシルはOKか?」

というような問題です。

 「形式」的には「×」なのでルールとしてはアウトなのかも知れませんが、意味から考えて、シャープペンシルを禁止する理由は乏しいかも知れません。
 なので、この場合は、申出したらOKになるかもしれないし、今後ルール変更になるかも分かりません。
 制度とか法律が世の中に追いついていない、というときに、こういう「形式」と「実質」のずれが起こり易いものです。

 さて、今回の最高裁判決では、「形式」と「実質」との両方を検討した結果、「花押を書く」では自筆証書遺言に必要な「押印」にならない、ということになったわけです。

 なお、自筆証書遺言については過去の最高裁判決で、「指印」はOKとされています。こちらは「花押を書く」のと違って、「押印」と認められています。判断の基準は今回の判決と同じことが書かれている箇所がありますので、法学部生の方などは参照されておかれると良いと思います。

 あと、実際に遺言をすることを考えられる方は、次の点をご注意願います。
 よく言われることですが、遺言をする場合、自筆証書の作成は方式が整っていないと無効になる恐れがありますから、一定の遺産があって確実に遺言通りになるようにしたい場合は、公正証書遺言にされることをお勧めします。

                       神戸シーサイド法律事務所
                             弁護士 村上英樹





 



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