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金利年5%!!~民事法定利率の話 [法律案内]

 ホントのホントに元本保証で年5%!!何ら条件無し!!なんていう預金があったら、絶対誰でもお金を預けるでしょう。


民法404条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする。


 例えば、交通事故などで、被害者から加害者に対して損害賠償請求権が発生したとすると、それは事故の日から年5%の割合で遅延損害金が発生します。

 だから、

損害賠償金 元本 100万円

だとすれば、1年あたり5万円の遅延損害金(まあ利息のようなものです)が発生し、それを付け加えて払ってもらえるということになります。

 年5%。すごい金利ですね!今の金利(大口定期10年でも0.2%くらいらしいです)からすれば考えられない。
 
 そうすると、事故被害者は、現実の金利とは考えられない運用益でお金を受け取れるのか?事故太りしているのか?と思われる方がいるかも知れません。

 それは、とんでもない誤解です!!

 誤解、どころか、全くの逆なのです。

 
 実は、損害賠償額の中の計算で、死亡や後遺障害という被害を受けた人は、なんと、

将来分の金利を年5%として計算して、さっ引かれている

というのが現状です。

 
 説明すると、次の通りです。

 
 交通事故で死亡とか後遺障害を残した人の損害は、「逸失利益」が中心となります。

 「逸失利益」というのは、たとえば、事故で寝たきりになった人がいるとすれば、その人は将来働くことが出来ないのでその分収入が減るということになる、その損害のことです。
 これを加害者に請求することになります。

 ただ、将来の収入(生涯にわたって。通常67歳までを基準にします。年齢によっては30年分ということになる場合もあります。)を事故後に一括してもらうわけなので、本来なら将来毎月もらうはずの収入と比べて早くお金を手にすることになります。

 なので、先にもらえるお金の「運用利益」を計算してさっ引くということになります。

 このさっ引く「運用利益」の計算の金利が、今の法律を適用すると、

年5%

なのです。

 具体的には、もともと年収550万円の人が、事故が原因で寝たきりになり100%労働能力を失ったとしましょう。仮に38歳~67歳まで30年間の後遺障害による「逸失利益」を考えます。

 金利をさっ引くことを考えなければ

 550万円 × 30年間 =1億6500万円 

です。

 しかし、「年5分の金利をさっ引くこと」を考えるとこうなります。
 
 550万円 × 15.372(←30年間の年5%の金利をさっ引くと、×30でなくてx15.372という計算になる)
               = 8454万6000円

なんと、ほぼ半額になってしまうのです。上の例だとその差8000万円!!

 現実にも、先にもらったお金を預金して金利5%がつくならば損得がないことになりますが、そんな状況にはない。
 損です。

 この30年間なら15.372とかいう数字を「ライプニッツ係数」といいます。

 
 実際に運用しても年5%の利息を受け取れない状況なのに、しかも、死亡とか重度の後遺症を残す人にとって何千万円も「さっ引かれる」ことになり辛いことになる、というおかしな状況が生じています。

 
 実は、裁判所でも、これはあまりに気の毒だということで、平成8年から16年頃にかけては、いくつかの地方裁判所で年5%よりも低い利率で(たとえば3%などで)、「さっ引く率」を抑えた判決がだされていたことがあります。
 ただし、平成17年6月14日の最高裁判決で、実際の金利が低くても、逸失利益で金利をさっ引く際には年5%を使う、ということになり、実務もそれで決着がついたかのようになってしまいました。

 
 
 というわけで、

年5%の法定利率 民法404条


というのは今の実態とかけはなれているのです。そのこと自体問題です。

 
 が、更に問題なのは、その実態とかけはなれた金利が、交通事故被害者など弱い立場の人に不利に、支払をする保険会社の側に有利に、働いてしまっていることです。

 
 それなので、この民事法定利率、法律の定め自体を改正すべき状況だと言えます。

 法務省なども民事法定利率の改定の必要があると考えているようですが、なかなか実現しません。(色々、それで今までより損をする人もいるので簡単ではないのでしょう。)
 早く改正されるようにと願っています。

 その結果、自動車保険料は値上がりするかも知れません。が、事故のリスク・コストが実際はそれだけ高いというのならば保険料が高くなるのは仕方ないでしょう。
 その責任を負えないなら、車を運転することを諦めなければ仕方ないでしょう。

 以上の通り、法律の世界独特の、年利5%のお話しでした。



補足 ちなみに、商事法定利率というのは 年6% とされています(商法514条)。


                             村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所




 
 
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コメント 5

心如

 事故の被害者と保険会社を比べたら、あきらかに被害者のほうが弱者だと思います。法律は、できるだけ弱者を救済するように作らないと困ると思うのですが…
by 心如 (2012-07-07 06:16) 

shira

 何か、すごく損な感じの話ですね。
 話が逸れますけど、かつて私の県の高校では、生徒募集定員が1クラス減ると教員の定数がマイナス2になりました。ところが1クラス増えるとプラス1.5でした。現在はもうちょっと柔軟に対応しているようですけど、ここいらへんの根本思想が似ているような感じがします。
by shira (2012-07-07 22:11) 

hm

心如さん

 ナイスコメントありがとうございます。
 弱者救済になっていない部分も、誰も声をあげなければそのまま残りがちになるというところのようです。

shiraさん

 ナイスコメントありがとうございます。

 確かに似ていますね。
 交通事故の損害賠償も、もともと、「額を抑えよう」というのが一種の「社会的要請」でしたから。

by hm (2012-07-09 14:07) 

ayu15

以前「命の値段」を書いたことがあります。

視点1・・被害者指数と加害者指数の乖離
事件事故では被害者心情だけでなく被疑者側も見ないといけないですよね。
したがって同じ被害者指数だったとしても加害者指数で変わっちゃいます。


視点2・・アメリカは極端だそうですが、被害者の今までの年収で賠償額が決まってしまいます。
年収億単位の人に比べると無職の人の命の値段はろくにないことに・・・。


交通事故まで命の値段はなんか悲しいです。


いろんなとこで個人に冷たい(特に立場弱い状況の人に)ような気がします。

 こういうことにこそ法理念が機能して人を守ってほしいです。
by ayu15 (2012-07-12 12:14) 

hm

ayuさん

 仰るとおり、死亡事故の場合の逸失利益(将来得られたであろう収入)は、それまでの年収を基礎に決めるのが原則です。
 人には色んな可能性があるんですが、それが十分汲み取られるかどうかは…なかなか厳しいです。
 
 
by hm (2012-07-13 16:47) 

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