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養育費が払われない場合、どうすればよいか? [法律案内]

 私のブログで、一番アクセスをたくさんいただいている記事は、

養育費・婚姻費用の算定表~なぜ表で決めるのか?
http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2009-05-14

です。

 この記事は、主に、離婚の際に問題となる「養育費・婚姻費用」について、

昔は、その額を決めるのに時間がかかりすぎて、毎月必要なお金なのにいつまでも支払ってもらえないなどの問題があった

けれども、「算定表」が出来て、迅速に手続ができるようになった

ということを書いた記事です。基本的には「算定表」を褒める記事です。
 
 最近、日本弁護士連合会は、この「算定表」には不十分な点もあり、これだけで安易に物事を進めるのには問題があるという意見(http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2012/120315_9.html)を出しており、大変役に立ってきた「算定表」も今後見直しの必要があるかも知れない、とのことです。

 さて、それはともかく、養育費・婚姻費用の算定表に関する記事にアクセスを頂くというのは、現実に、この問題について悩んでおられる方が多いということでしょう。

 そこで、今回は、「養育費決定、その後」について、解説します。

 離婚調停や裁判で、養育費が決まったのですが、払われない場合どうしたらよいか?

  これは、本当にポピュラーな問題です。

  ソフトな方法から順に紹介すると

履行勧告 
 
 (法テラスHPの説明より引用)
 家庭裁判所の調停調書、審判調書、判決書において養育費の支払いが記載されている場合に、家庭裁判所において支払状況を調査のうえ、支払いの勧告や督促をする制度です。履行勧告は、申立てが簡単で、手数料もかかりませんが、勧告には強制力がありません。(引用終わり)

 例えば、離婚した夫婦において、母親側が未成年の子を養育しているとしましょう。ここで、離婚するときに、父親が母親に対して、「子が成人するまで、月5万円の養育費を支払う」という約束をし、そのことが家庭裁判所の離婚調書に記載されたとしましょう。

 後日、父親側からの養育費が支払われなくなった。
 そこで、母親から直接言っても払ってもらえないときに、家庭裁判所に申し立てて、裁判所から父親に対して「調停で決められたとおり払いましょう。」ということを言ってもらえるということです。
 
 家庭裁判所から言われたらある程度衝撃を受ける、という人は多いでしょう。

 ですから、この勧告に強制力はありませんが、勧告に従って、再び支払いを再開してくれる、という人もある程度います。

2 履行命令 
(法テラスHPによる説明 引用)
 履行勧告によっても支払われない場合には、家庭裁判所は相当の期間を定めて履行命令を発することができます(運用として、先に履行勧告をするのが一般的です。)。履行命令に従わない場合には、10万円以下の過料の制裁があります。(引用終わり)

 これは、過料の制裁もあるというのですから、少しハードな手段です。
 
3 強制執行 

 それでも、払われない場合に、直接的に、相手の預貯金や給料から養育費を取る、という手段が「強制執行(きょうせいしっこう)」です。

(法テラスHPによる説明 引用) 
 強制執行とは、判決や審判・調停調書、執行認諾文付きの公正証書など、強制執行力のある書面により養育費の支払義務が定められている場合に、地方裁判所に強制執行の申立てをし、支払義務者(相手方)の財産から強制的に支払いを確保する制度です。(引用終わり)


 養育費については、平成15年に民事執行法が改正され、支払がない場合には、一定の場合、将来分も含めて強制執行ができることになっています(民事執行法151条の2)。

 もっとも、不払いがあっても、将来の養育費(子が成人するまでの養育費)を今すぐ一気に全部取る、ということができるわけではありません。

 将来、毎月発生していく養育費について、相手(父親など)の将来(養育費の支払日より後)の給料を差し押さえて、そこからもらえるように強制執行できる

ということです。

 つまり、相手が会社勤めを継続している限りは、差押え分は養育費を確保出来るということです。

 強制執行したけれども、相手が会社を辞めてしまったら?
 そのときは、相手の次の勤務先の会社の給料に対して差押えをするなどしなければなりません。

 また、給料の差押えをするときは、相手の給料の2分の1部分までしか押さえられません(民事執行法152条3項)。給料が月額66万円を超える人に対しては、毎月、「給料-33万円」を差し押さえることができます。
 これも、養育費などの場合は特別で、それ以外(貸金など)の給料の差押えは4分の1までしか差押えできません(民事執行法152条2項)。
 養育費は、子の生活などに関わるお金なので、特別に、給料の多くの割合を差し押さえることができるようにして、確保されやすくしている、というわけです。

 養育費について強制執行できる範囲を広げた法改正が平成15年、先に紹介した「養育費・婚姻費用算定表」が紹介されたのも平成15年です。
 それまでは、養育費を決めるのも、確保するのももっと大変でした。
 子どもの養育に不足がないように、ということは、みんなが思っていた課題だったのです。
 子どもの問題ですから「今日より明日」なのです。

 昔に比べて随分整備されてきた各種の制度を活用して、子どもの養育のために、よりよい環境整備が出来れば、というところです。

4 養育費減額・増額の調停 
 
 養育費については、たとえば離婚の時に、将来の分について「毎月○万円」と決めます。
 ですが、その後、お互いに、失職したり、転職したり、昇給したり、色んな事情変更があります。
 
 「養育費を決めたけれども、リストラにあって、払いたくても払えない」こんなときどうするか。 

 父・母の収入が明らかに変わった場合には、家庭裁判所に養育費の額を決め直すように求める調停を起こすことが出来ます。


 その他にも個別には細々としたことが色々あるのですが、概要は以上の通りです。

 ソフトな手段からハードな手段まで紹介しましたが、やはり、親子に関することです。
 (はじめから、相手が法律や約束を無視する態度を明らかにしているのでない限り)原則としては、ソフトな手段から順を追ってやっていき、お互いの心の溝をできるだけせばめて、離婚した後でも、こと子の養育に関してはできるだけ協力し合える関係を維持(または回復)するようにしていく、というのが理想ですね。(ただし、理想通りにいかないことが多いのが現実ではありますが。)

                村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所

補足 
 離婚に関係する問題は、養育費・婚姻費用以外にもあります。
 たとえば、①離婚請求が認められるか②親権③慰謝料④財産分与など、また、離婚の手続(協議、調停、裁判)については、神戸シーサイド法律事務所のHP(←クリックで開きます。)で解説していますので、関心のある方はご覧下さい。
 事務所では、法律相談を随時お受けしています(初回30分までは無料)。
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コメント 2

ayu15

とてもいい助言ですね。
でも相談せずに済むようにと思います。


強制執行で行ってもらうともぬけの殻で
口座も特定できない
勤務先不明
となるとどうしようもないですよね。

by ayu15 (2012-04-28 07:03) 

hm

ayuさん ナイスコメントありがとうございます。
 ご指摘の通り、執行が実際には難しい例もあります。このような「どうしようもない」事態を防ぐためにどうすればよいか?という点についても色々議論されているようです。

心如さん、shiraさん、yoshyさん ナイス有り難うございます。
by hm (2012-05-02 11:52) 

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