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「デリバティブ被害」と裁判、金融ADR [消費者事件]

 自治体(市など)や大学までもが、金融商品、「デリバティブ商品」「仕組債」への投資による損失を出し問題になっています。

 そして、中小企業(や社長個人)なども、銀行や証券会社の担当者から勧められて「通貨オプション」などのデリバティブ取引が、リーマンショックなどをきっかけに大きな損を出しています。

 こういう問題は「投資被害」と呼ばれ、私が加入している

神戸先物・証券被害研究会

http://www5f.biglobe.ne.jp/~sqkobe/index.html

では、2か月に1回くらい弁護士有志が集まり、裁判例を研究したり、全国で同じ考えで活動している人の活動状況を情報交換したりしています。

 「デリバティブ」取引というのは、次のようなものです。

 「デリバティブ」と言う言葉は、英語で「派生の」という意味です。
 「デリバティブ取引」とは、「金融派生商品」の取引と呼ばれ、預金や貸付、株式や債券の売買、外国為替取引など伝統的な金融商品(取引)から派生したもののことをいいます。先物やスワップ、オプションと呼ばれるものが含まれます。
 具体的な商品としては、「通貨オプション」等のオプション取引や、「金利スワップ」などのスワップ取引等があります。

 その仕組をここで説明すると長くなるので、特徴だけ言いますと、「新種の取引であり」「仕組が複雑で」「リスクが大きい」ものがほとんどです。

 そういう取引についての「被害」救済を私たちは目的としています。

 
 さて、ここで、

「デリバティブ商品なんていうリスク商品に手を出して損をした、って、そんなの『被害』なの?
 単に、株で失敗して損をした、っていうのとどう違うの?」

という疑問が寄せられるはずです。

 なるほど、もっともな疑問です。

 しかし、投資などズブの素人同然である中小企業主に対して、専門業者である銀行・証券会社等には、リスク商品を売る際に、

・ その商品が相手に合っているものか?をよく確かめて売らなければならない(「適合性原則」といわれます) ・ その商品の仕組や危険性を分かるように説明しなければならない(「説明義務違反」といわれます)という法律上の義務があります。

 この義務に違反して、例えば、「本来は何も危険な取引に手を出す必要もないし、もともと手を出したいとも思っていない相手に、『金利が有利で、安全な商品です』とだけ言って、ちゃんとした仕組や危険性の説明もせずに、リスク商品をすすめた」となれば、これは業者の違法行為となります。

 業者側の担当者によっては、自分の成績を上げるために、良いことだけを言って、ちゃんとしたリスクを説明せずに、危険な取引に相手を誘い込む人が残念ながら相当数いるようです。

 
 こういうのを「被害」と呼んでいるのです。

 
 何でも、「自己責任」論、といえばスッキリしているような気がしますが、こういう被害の場合、「あなたの自己責任です」というためには、

・ 投資商品のリスク等も包み隠さず、分かるように説明して、その上で「やるかやらないか」を自由に判断できるような状況

が前提となります。

 「目隠しをされて歩かされて谷底に落ちた」ということを「自己責任」論では片付けられないでしょう。

 
 
 さて、こういった「デリバティブ商品」や「仕組債」などの被害に対して、客が証券会社等を相手取って、訴えて勝訴する例も増えています。(ただし、「勝訴」と言っても、ほとんどは「一部勝訴」です。やっぱり、裁判所も「自己責任」論をある程度採用しています。)

 多くの裁判は、

商品がどのような性質を持っていて、
どのような客には不向きなのか、
担当者が客にどんな説明をしたのか、

ということを金融の専門家の知識なども借りながら、詳細に主張、立証し、地道に勝訴に繋げていくという活動です。
 大阪の証券被害研究会の先生方が、かなり成果を挙げられています。進歩的な判例を獲得されている先生方のたゆまぬ努力や行動力に頭が下がる思いです。

 私が所属する神戸の先物・証券被害研究会では、先物事件の被害救済例は多数ありますし、かつて、ワラント等などの証券被害の救済例も多数ありますが、残念ながら、デリバティブ被害について裁判で解決した等の例はまだありません。
 これから、メンバーで弁護団を組むなどして、「金のことによって人が苦しむ」世の中を変えるべく成果を挙げていこう!と言いながら、研究会などをしているところです。

 
 というのが、私たちの今の状況なのですが、実は、弁護士の世界では全然別の「デリバティブ事件」の動きがあります。

 私の属する神戸先物・証券被害研究会のメンバーで、今もっとも活発に会をひっぱって下さっている先生の1人である弁護士井上伸先生のブログから次のような状況が報告されています。

デリバティブ,仕組み債バブル
http://blog.goo.ne.jp/deppa/e/79b3d35263a7348979ba8619c25f3bea

 要するに、世の中に「デリバティブ」被害がたくさんあるので、大量広告を打って、事件を集めて、それで「一儲けしよう」という弁護士も少なからずいるようだ、ということです。

 ちょうど、サラ金業者が取りすぎた利息について、「過払い」事件がたくさんあって、大量広告で事件を集めて、そればかりやって、大量処理し、大儲けした弁護士がいる、というのと似ています。

 
 私は、金儲けが悪いとは思っていないので、大量広告でも金儲けでも何でも

一つ一つの事件がちゃんと処理され、人助けになっているのなら、悪いことはない

と思っています。

 が、残念ながら、そうでもない事件処理は「過払い」のときもあったようです(同じ弁護士としては、残念なことですが)。

 
 「デリバティブ事件」というのは、私が上で説明したことによれば、
 
商品がどのような性質を持っていて、
どのような客には不向きなのか、
担当者が客にどんな説明をしたのか、

ということを金融の専門家の知識なども借りながら、詳細に主張、立証し、地道に勝訴に繋げていくという活動

なのだとすれば、「大量に集めて、大量に処理する」ことは不可能ではないか、と思われるかも知れません。


 しかし、最近は、上記で紹介した井上先生のブログでも解説されているとおり、金融ADR(「ADR」というのは、「裁判外紛争解決手続」のことで、要するに、調停のような話し合いによって物事を解決する手続です。この分野では「全銀協」全国銀行協会のADRと、「FINMAC」証券・金融商品あっせん相談センターのADRがあります。)が整備されてきています。
 
 そのこと自体は良いことで、こういう「金融ADR」でも、銀行・証券会社側が「被害のうち何割かを支払う」という
話し合いに応じることがあるので、この手続を使えば、「早期に事件を処理する」ことも不可能ではないという状況になっています。

 
 でも、私がここで強調しておきたいのは、

「ADR」はあくまで「話し合い」であって、そこで満足いく結果が得られない場合は訴訟をやる必要がある

ということです。

 そして、「イザとなれば、手間を掛けても訴訟をやる!!」という覚悟が弁護士にあるかどうか、が重要です。
 訴訟となれば、上に述べたように手間暇かかります。「大量処理で金儲け」などという発想では、到底割に合わない活動になります。
 しかし、「デリバティブ商品」による「被害」があるのなら、そんなものがはびこる世の中を変える一助となる「判例」を勝ち取るぞ!という気概こそが弁護士の生命線だ、と考えれば、手間暇だってかけられる、と我々は思っています。

 逆に最悪は、「ADR」で見込めそうな解決について、「本当は裁判をやったらもっと良い結果が得られる可能性が高いだろうに」と知りつつ、面倒くさいから、依頼者に誤った「説得」をして、そこでいい加減に解決をすることです。(依頼者が「裁判をしたらもっと取れるとしても、早く解決したいからもういい。」と言うのならば構いませんが。)


 「金融ADR」を活用することは良いことですが、

イザとなれば、裁判になっても、しっかりやってくれる弁護士かどうか


 ここがこの問題で弁護士を依頼するときのポイントです。


 と、強調しておきながら、私も、紹介した研究会(神戸先物・証券被害研究会http://www5f.biglobe.ne.jp/~sqkobe/index.html)も、未だ、デリバティブ被害については、成果となる判例を獲得していません。

 そればかりか、私たちの研究会では、どうしても地味な広報にしかならないので、世の中にデリバティブ被害は多数あると思われるのですが、他の「大量広告」等の陰にかくれてしまって、被害者の方からのご相談もまだ数えるくらいです。

 この点は、社会情勢や「大量広告」など他人のせいにするのではなく、私たちの側の「伝える努力」「伝える工夫」が不十分であるという現実を直視して、もっと、たくさんの人に、

私たちにはこういう志があります!

私たちが依頼を受けたら、こういう姿勢でやります!

ということをちゃんと伝えていかねばならない、とメンバー同士でと言い合い、今、そのための準備をしているところです。
 
 というわけで、神戸・証券被害研究会は、「通貨オプション」や「金利スワップ」等の「デリバティブ被害」や、「仕組債事件」について、

消費者被害救済 金によって人の心が歪められる現状を正す 依頼者の意向や利益に反しない限り、なるべく裁判で解決し、世の中を良くするべく「判例」をつくる努力をする

という方針で取り組みますので、デリバティブ取引による被害に遭われている方で、その方針を良しと思われる方は是非、同研究会にご相談下さい
(→ 神戸・証券被害研究会 http://www5f.biglobe.ne.jp/~sqkobe/index.html
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ayu15

根拠のないかんですがこの件はお金の一人歩きの原因の一つと思えます。

経済学者のいる大学まで被害というのはびっくりです。

学者でさえやられるんですから弁護士の方はほんと大変でしょうね。
by ayu15 (2012-03-27 11:30) 

hm

ayuさん

 ありがとうございます。
 ご指摘まさにその通りです。


心如さん、shiraさん

 ナイスありがとうございます。
by hm (2012-03-29 10:07) 

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