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「マチネの終わりに」(平野啓一郎著) [読書するなり!]

 今日読み終わった本です。 


マチネの終わりに

マチネの終わりに




 作者の平野さんは、1975年生まれ、京大法学部卒。
 これ、私のプロフィールと同じです。

 同時期に京大法学部にいたはずですが、私は平野さんと全く面識はありません。
 学生時代のことですから、もしかして、私の知らないうちに何らかの迷惑をかけたことがある、とかそんな接点がある可能性は否定できませんが…
 
 平野さんの小説を読むのは、デビュー作「日蝕」以来です。
 「日蝕」は、私が司法修習生だったときでした。

 今回の作品は恋愛小説ですが、人間の存在そのものへの掘り下げ方、その描写がとても読み応えがあって、素晴らしい作品でした。
 世界的ギタリストの蒔野と海外で暮らすジャーナリストの洋子との恋愛を描いたものですが、数奇な運命をたどります。
 
 文章も非常に美しく整っていて、とても質の高い小説だと思いました。

 私が自分の仕事柄印象に残ったのは、主人公の1人ジャーナリストの洋子が、アメリカで夫と暮らす中で、夫のしている仕事(金融に関する研究職)についてついつい気になってしまう、という一節でした。
 サブプライムローン問題の根底に関するものですが、証券会社等が金融商品を作るときに明らかに危ないと分かっていて作っているのではないか、研究者もそれと知りながらお墨付きを与えているのではないか、と洋子は感じ、それに従事している夫に対してどういう考えで仕事をしているのかを聞かずにはおられなかった、という場面がありました。

 私は金融商品被害事件に関わってきましたが、やはり、最近の新しいタイプの金融商品(たとえば、「仕組債」と呼ばれるものなど「金融デリバティブ」)の中には、「危険を敢えて見えにくい形にして売っている」と思わざるを得ないものが多くあります。
 これは、私や、日本の弁護士たちが言っているというだけではなくて、海外(アメリカ、オーストラリアなど)でも裁判沙汰になっています。

 仕事をする上で、そのレベルや大小には違いがあるにせよ、「自分が心底正しいと思うこと」と「仕事の上で会社や関係者から求められること」のギャップというのは必ずあります。
 もしかしたら、グローバル経済の威力が大きくなっている現代のほうが、昔よりもこのギャップが大きくなりやすいのかも知れません。
 そういう中で自分のポジションで(おそらく)悩みを持ちながら仕事をする人の、仕事人としての面と、家族ある人間としての面、それをあわせた「存在」というところを描いているのが、私には読み応えがありました。

 もちろん、この小説の主題は、金融商品ではなく、恋愛です。
 
 激動する現代社会(他にも、イラクでの紛争、東日本大震災などが主人公たちの生き方に多大な影響を与えます)の中でそれぞれに懸命に生きている2人の恋愛の結末やいかに?

という、読者を飽きさせないストーリーで、一気に読んでしまいました。

 「読書の冬」にお勧めの一冊です!

 
神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹

 

養育費・婚姻費用の算定表について、日弁連が新しい提言 [法律案内]

 11月15日に、日弁連(日本弁護士連合会)が、離婚後の養育費などについて、「新しい提言」をしました。
 
日弁連ホームページ 養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2016/161115_3.html

 養育費・婚姻費用については、私の過去の記事で取り上げています。

「養育費・婚姻費用の算定表~なぜ表で決めるのか?」
http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2009-05-14

「養育費が払われない場合、どうすればよいか?」
http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2012-04-27

 「なぜ表で決めるのか?」では、「表で決める」ようになった以前の時代(2003年ころ以前)には養育費・婚姻費用を決めるのに時間がかかりすぎていたことなどを説明しています。
 「表」がなかった時代は、調停などで、養育費等を正確に計算するための資料として、細かい領収証などを当事者に提出させたりしているうちに、何ヶ月も経ってしまっていました。
 しかし、養育費や婚姻費用(別居中の生活費)は、毎月必要な生活のお金ですから早く決めてもらわないと困ります。実際、「細かな領収証がどうとかで何ヶ月も待たされてはたまらない」という声が上がっていました。
 そんな状況を打開するのに、「表」ができた(2003年)ことが大変役に立ったのでした。
 これのおかげで、養育費や婚姻費用を、(以前よりはずっと)素早く決めることができるようになりました。救われた人も多かったと思います。
 余談ですが、この「表」ができた2003年は星野監督のもとで阪神タイガースが18年ぶりに優勝した年でした。

 さて、それから時が経つこと13年…

 この「表」について、もっと良いものにできないか、という動きが出てきました。

 2003年のときは、とにかく実際の調停などで「使える」「表」を作る、ということに意義がありました。はじめての「使える」「表」という意味では、このとき作られた表はよくできたものだったと思います。

 今度は、その「表」をさらにきめ細やかに、夫婦、父・母・子の生活に実態に合うように作りかえるということが課題になってきました。 

 主な点としては、以前の表では、収入から生活費以外に必要な出費として差し引く金額の概算の仕方の問題で、支払われるべき養育費の金額が実態よりも低めに出やすい傾向がある、ということが指摘されていました。
 今回の日弁連提案の「新算定表」では、その問題点について必要な改善をして、また、小学校入学前と入学後の養育に必要な負担の違いに考慮してよりきめ細かな「表」の分け方がなされています。
 また、表を作る上で基礎にする統計資料も最新のものが採用されました。

 その結果、代表的な例

 離婚後の養育費
  父 : 年収400万円
  母 : 年収175万円、子ども15歳と同居

の場合は、「現算定表」(2003年)では月4万円だが、日弁連提案の「新算定表」では月7万円になる、と試算されています。

 新聞ニュースなどによると、「現算定表」と比べて養育費の額が1.5倍くらいに増額される例が多くなるといわれているようです。

 もちろん、これは、養育費を払う側にとってはきつい、ということでもあります。

 ただ、上の例でいうと、おおよそ

父親の月収は平均して33万円(400万円÷12)
母親の月収は平均して15万円(175万円÷12)

子どもの生活費を月に約10万円 として、父7万円、母3万円負担する 

ということになります。
 こう考えると、まずまず妥当な線ではないか、これまでのように父4万円の負担ならば母子側は相当しんどかったのではないか、と思えます。

 さて、今の段階では、日弁連が新しく提言をした、という段階ですから、まだ、すぐにこの「新算定表」が調停などで採用される、というわけではありません。

 ただ、これからは、私たち弁護士もこの「新算定表」提言があることを意識して活動することになりますし、家庭裁判所の裁判官・調停委員もやはり意識するでしょうから、これからの調停・審判にも影響があると思います。

 というわけで、 養育費などの「算定表」がこれからどうなるか? は今とてもホットな課題となっています。

神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹

民法改正されたら~法定利率は3%からの変動制 [法律案内]

 近い将来、民法は全面的に改正されることになりそうです。

 既に平成27年に、法制審議会で改正の要綱案が決定されています。
 http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900244.html

 以前、私の日記で、法定金利が5%という破格の高率であることについて記事を書きました。
「金利年5%!!~民事法定利率の話」
 http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2012-07-06
 特に、交通事故の死亡・後遺障害事案について、将来の逸失利益(その人が事故に遭わなければ得られたであろう一生の収入)の計算で、法定金利5%が被害者に不利に働いている、ということを書きました。

 金利5%というのは今の経済情勢(長く続く超低金利、また、かつてのような経済が急成長する状況は考えられない)ことからして、余りに実情からかけ離れています。
 また、それを前提に利息請求することも、また、死亡事故などで逸失利益の計算に「中間利息控除」として5%を使えば(5%分の金利を「天引き」して賠償額を決めると)被害者が大きな不利を被ることなどから、不都合があります。
 
 このように5%は実情に合わないという共通認識から、民法改正では、

1 まず法定金利(契約で金利を決めなかった場合の貸金などの金利)を初期設定として3%とする。

2 その後、3年ごとに、過去5年分のデータ(正確に言えば、6年前~2年前の短期貸付の平均利率)をもとに、1%単位で見直しをする。

という変動制をとる方針が決まっています。
 ただし、変動制について、細かい説明は省きますが、相当大きな実勢金利の変化がない限りなかなか3%は動かない仕組みになっています。
 なので、民法改正後、当分は法定金利3%になる可能性が高いといえます。

 また、民法改正要綱では、交通事故の死亡・後遺障害事案での逸失利益の計算(中間利息控除)でも、上記の通り定まる「法定利率」を使うと定められています。(現在の民法は、中間利息控除について「法定利率」でしなければならない、とは書いていません。最高裁判決は「法定利率で行う」としています。)

 ですので、現在の法定利率5%で「中間利息控除」をして逸失利益(賠償金の大きな部分)を決めるよりも、3%のほうが被害者にとっては有利になります。
 「中間利息控除」として減らされる金額が少なくてすむからです。
 それでも、年利3%でお金を現実に運用することは出来ないので、「中間利息控除」が被害者に不利に働くという点が解消されるわけではありませんが。

 なお、法定利率はあくまで、契約で金利を決めなかった場合の話です。

 ですので、例えば「AさんがBさんに対して金100万円を貸した」場合に、

1 契約書に金利が明記してある(たとえば、10%、1%、利息なし、など)場合
   →契約書に書かれた金利になります。

2 金利の約束がない場合(決めなかった場合)
   →現在は               5%
    民法改正されたら       当分は3%

となるということです。

 民法改正は全面改正になりますので、この他にも、色々変わります。
 民法というのは、取引上の基本ルールを定めた法律ですので、改正は私たちの暮らしに影響することがあります。

 他の変更点についても、折に触れてご紹介していこうと思います。

神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹








 

もっと伝える!~インターネットラジオ「元気が出る法律相談所」 [弁護士業について]

 新しい試みとして、神戸に本拠を置くインターネットラジオRadiCroにて

 弁護士村上英樹の「元気が出る法律相談所」

という番組のパーソナリティをすることになりました。

 月一回、第3木曜日pm12:00~12:30

の放送です。

 そんなのリアルタイムで聴けません、という方がほとんどだと思います。

 バックナンバーを神戸シーサイド法律事務所のホームページに置いています。

 今や、アメリカ大統領選挙でも既存のメディアの世論調査で測りきれない結果が出る時代です。
 
 RadiCroは、今年7月に立ち上がったばかりのインターネットラジオ局です。
 今はまだ全ての時間枠は埋まっていませんが、神戸大学の学生さんたちの番組や、音楽、アートの番組など魅力的なコンテンツで構成されており、これからの発展がとても楽しみなメディアです。
 神戸を本拠とする新しいメディアの発展に関与できることが楽しみで参加することにしました。


 また、今まで文章を中心に法律の世界を広く皆様に伝えることをやってきましたが、これをさらに広げて、私の声を通じて「もっと伝える」ということに一歩踏み出そうと思って始めることにしました。

 一回目は、

電通事件を通して考える長時間労働の改善



子どもが他の子に怪我をさせてしまったら?という悩み相談

とを解説しました。

 「元気が出る」としたのは、やっぱり、誰でも生きていれば、

辛いこと、しんどいこと、嫌なこと

にぶちあたります。
 
 そんなとき、法律や法律家(弁護士、裁判官、検察官)は、

人を元気にする
人を幸せにする

役割をいかに果たせるか、という存在だと思うからです。

 また、ニュースの解説(+ よりよくする提言)や、法律問題の解説を通じて、聴いて下さった方が、

「少し視界が開けた。」

と思って頂ければ、いくらかでも「元気」に繋がるのではないか、という思いからです。

 そしてこの番組作りを通じて、自分の「伝える力」をもっともっと磨いていきたいと思っています。
 「伝える力」はプレゼン能力のように思われがちですが、実は、伝える内容そのものの本質を自分がちゃんと勉強することが第一です。
 それをより一層努力していきたいと思っています。

 一回目は最初のほうはなかなか緊張しており「噛み噛み」だったりしますが、徐々に、いつものペースでお話しできたと思います。
 「噛み噛み」部分も含めて興味のある方は上のリンクから聴いて頂ければ幸いです。
 
 


スーパー「moon」 [音楽は素晴らしい]

 最近、アクセス数が急に伸びている過去記事があります。

 それは、

子どもが親になる  ~REBECCA「moon」を聴いて 
http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2007-09-21

この記事です。

 もう9年前の記事なのですが、REBECCA(ヴォーカルNOKKO)の名曲について書いた記事です。

 「moon」の曲は本当に良い曲なので、知らない方(特に若い方)には是非聴いていただきたいです。
 その曲のフレーズが若かった私の心にとても響いた、なので、何世代にわたっても贈り物にしたい曲だ、という記事です。
 たとえ、一時、道を踏み外すことがあっても大切に生きて欲しい、という切なるメッセージが歌詞に含まれていて、また、曲がいい。
 
 で、この記事は以前からアクセス数が多かったのですが、ここへきてさらに急上昇。なんで急に!?と思った私はかなり鈍感でした。
 もう、理由はみなさんおわかりかと思います。この記事のタイトル、ですよね、きっと。

 さて、この「moon」の歌い出しが、まさに「昔ママがまだ若くて小さなアタシを抱いてた 月がもっと遠くにあったころ」なのですが、今は、本当に物理的に月がほぼ最も近くにあるんですね。

 昨日、写真を撮ってみました。
 「まるで手を伸ばせば届きそう」という絵です。
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 私がREBECCAを聴くようになったのは高校生になってから。
 REBECCAは私が灘高目指して受験勉強していた中3のときに解散していました。(中学時は、もっとポピュラーな、プリンセスプリンセスとか渡辺美里とかTMネットワークを聴いていました。美里が私の受験時代の応援ソングでした。)
 
 で、「moon」は、解散してしまったバンドの曲だからこそ、さらに魅力的に思えた。
 また、解散時期と私の年齢の関係から、同学年より先輩にREBECCAを聴いている人が多かったことからも、憧れの度合いが大きかった。
 なので、「moon」も私からすれば、少し「お姉さん」の曲、というイメージで、それがゆえに、より惹きつけられるものがありました。 

この曲REBECCA「moon」では、

月は(あなたの)全てを見て知っている 超人間的な、神秘的な存在

として歌われていて、かつ、それにぴったりの楽曲になっています。
 
 (大変古い曲ですが)まだほぼスーパームーンの夜のお供に、改めてオススメです!


                神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹

 

 

 

 
 

 
 



 

相手に弁護士が10人もついた!? [弁護士業について]

 法律的なトラブルになって、相手の弁護士から手紙などをもらったとき、

相手の弁護士のところに、10人の名前が書いてある しかも、10人分の職印(「弁護士山田太郎之印」など)が押してある

ということにビックリした、という問い合わせを受けることがあります。

 
 こういう手紙を初めてもらった人は、例えば、離婚事件でも、

夫に10人も弁護士がついた、勝てっこないんじゃないか?

こっちは1人、2人の弁護士で大丈夫か?

という印象を抱いてしまうかも知れません。

 
 「大丈夫か?」の問いに答えましょう。

 別に大丈夫です。「びびる」必要はありません。
 
 通常の場合(例えば離婚案件などで)、本当に相手方に10人の弁護士がついて、弁護団を組んで向かってくるということはまずありません。

 10人の弁護士の名前が書いてあっても、大抵は、「(担当)」として1人か2人の弁護士の名前が挙げられているものです。
 そして、実際にその事件を担当するのは1人か2人です。
 他のメンバーは最後までその事件に実質的にはタッチしないというケースが圧倒的に多いです。

 結局、お互いに1~2名の弁護士同士で事件をやるだけのことです。

 ですので、弁護士のハンコの数で「びびる」必要は全くありません。

 また、相手が「通常の10倍の弁護士費用を支払っている」というわけでもありません。


 この場合、相手の弁護士の事務所には、所属弁護士が10名前後いる、というだけのことです。

 ただ、最近は大規模な法律事務所が事件をやるときでも、所属弁護士全員がハンコを押して書類を出すということは少なくなっている気がします。

 実際にはその事件を担当しない弁護士の名前を表示したり、職員を押すこと自体、手間がかかりますし、たとえば、所属人数が20名、50名といった大規模な法律事務所となれば、もう全員がハンコを押すことさえ困難です。

 結局、合理的なやり方に戻って、大規模な事務所でもその事件を担当する1名、2名の弁護士だけが氏名を表示して印鑑を押すケースが増えているように思います。
 
 ということで、マスコミを賑わすような弁護団事件などで無い限り、普通の民事事件、離婚事件、相続事件などで、

相手に弁護士が10人もついて、その全員が一丸となって向かってくる

ということはありませんので、ご心配なく。

 
 神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹


 

相手に弁護士がつくのは「不利」なこと? [弁護士業について]

 今日は、例えばトラブル案件をかかえているときに、

相手に弁護士がつくかつかないか

についてお話しします。

 自分が弁護士をつけるかどうか?というのは自分にとって、法律のプロにアドバイスを受ける方がよいかどうかで決めればよいことです。
 たとえば、トラブル案件が離婚とか、相続とか、交通事故などの損害賠償請求など内容があるものだったら、一般論としては、弁護士をつけてプロに相談しながら進めていく方が有利でしょう。
 これは自分のこと。

 今日の話は、「相手に弁護士がつくかどうか」の話。
 これは、こっち側でコントロールできません。
 向こう(紛争相手)が弁護士に依頼するか、本人で訴訟や示談交渉に臨んでくるか?です。
 それによって何がどう変わるか。


 私、弁護士にとっては、相手に弁護士がつくのは決して嫌ではありません。

 弁護士同士のほうが、感情を抜きにして、何が争いか整理して話ができます。
 
 法のルールは双方分かっているので、争いの範囲も絞ることができます。

 なので、早く「あるべき幅」の中で解決できることが多くなります。


 もちろん、

弁護士がついている人   vs  弁護士がついていない人

となると、有利・不利としては「弁護士がついている人」が有利です。
 法律的なアドバイスや、これまでの裁判の経験を踏まえた判断を受けられるからです。
 
 ただ、「弁護士がついていない人」が、あまり勝手が分からないままに、自分の思いで裁判や示談交渉に臨む場合には、どうしても感情的になりやすいし、直接関係のないことも長時間かけて全部話さなければ気が済まなくなります。
 また、紛争を解決するには必要の無いようなことでも、細かい部分にこだわってしまって前に進めないということもよく起こります。

 こうなると、相手側、「弁護士がついている」側にとっても、実際には、トラブルが長期化してしまって困る、ということが起こります。
 もしかしたら、最終的な結果は相手が素人である分だけ有利になるかも知れませんが、早く解決をつけてスッキリさせたいのに、いつまでもトラブルが解決せずに長くストレスを抱えなければならない、迷惑だ、という場合があります。
 こういう場合には、依頼者も私も「むしろ相手に弁護士でもついてくれたらいいのに」という心境になることがあります。
 
 私たちの仕事(トラブルの解決)は、

・ 依頼者にとっての勝ち負け … 一円でも多く得をする結果を得る

という要素はもちろん大きいですが、それだけではなく、

・ ストレスフルなトラブルを早期に解決させる

ことや

・ お互いに禍根を残さないように(できるだけ少なくなるように)する

ことも大切になります。
 
 そういうことを考えたときに、理想は、お互いに、「トラブルのあるべき解決」を考える弁護士がついて、もちろんそれぞれの弁護士が依頼者のために全力を尽くした上で、双方にとってそれなりに納得がいく解決が得られることだ、ということになります。

 法律のプロとしては、依頼者の立場に立って主張すべきはするとしても、ある程度その事件の常識的な「落としどころ」を考えつつ進めていける、ということが大切なスキルになります(ただ、事件によっては「落としどころ」が見出しにくい案件もあります)。
 この「落としどころ」を意識するというのは、「弱気に、相手に妥協することを考える」のとは違います。
 むしろ、無茶なことをして依頼者を無駄に苦しめる(あるいは損をさせる)ようなことにならないように、方向性をしっかり見定める、という意味で重要なスキルです。


 ですので、私が仕事をするときには、

・ 自分が良い仕事をする

ことが第一ですが、

・ 相手にも良い弁護士がついてくれたらいいな

と思っています。
 そのほうが、私の依頼者にとっても、早期に、あるべき解決ができやすくなるからです。

 ただ、最初に述べたように、相手の弁護士選びは相手のすることなので、私がコントロールできません。
 言ってしまえばこれは「運次第」ということになります。
 なので、実際には、どんな弁護士が出てきても、弁護士がつかず本人相手でも、それはそれで必要な対応をするのみ、ということになります。


 まとめると、

 トラブル、訴訟や示談交渉などの話し合いについて、相手に弁護士がつく、ということは「不利」なことだと思う必要はありません。

 必要ならばこちらも弁護士を立てて、弁護士同士で整理した話し合いをして、早く、適切な解決を目指すことを考えるのが良いです。

 相手が本人でやるより弁護士がついた方が話が進みやすい、という場合も多いので、そういう場合には、むしろ「良いこと」です。

 
 以上、紛争になると相手方の動向は一々気になるものですが、そのうちの「弁護士がつくかつかないか」をどう捉えたらよいか、をお話ししました。
 読者の皆様の参考になれば幸いです。

神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹


 


 

映画『君の名は。』観てきました。 [息抜き!?]



小説 君の名は。 (角川文庫)

小説 君の名は。 (角川文庫)




 遅ればせながら、観てきました。

 まだこれからという人もいると思うので、ネタバレにつながることは書きません。

 アニメの進化もすごいな!という感想です。
 実写よりも子ども向け、ということは全くありません。
 実写と全く違うジャンルの完成度の高い作品という他ありません。

 無理矢理「弁護士」に繋げると、

 アニメも進化している!
 まけずに弁護士も、私も進化しなくては!
 
というところです。

神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹


弁護士「個人」の調査能力~続・弁護士は何でも調査できるのか? [弁護士業について]

 前回の記事

弁護士は何でも調査できるのか?
http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2016-10-27

を書いた後、そうだそうだコレ言っとかないとと思ったことがあるので補足します。

 一般の方が弁護士に依頼して、

「普通ならできないことを調べることができる」

という場合には、こういう種類のこともあります。


 弁護士「個人」の人脈や経験によって、

普通の人は繋がっていない専門家に繋がっていること

などがあります。

 例えば、弁護士「個人」の人脈として、

・ 友達に医者が多い
・ 建築関係の専門家とのつながりがある
・ 芸能人の知り合いが多い(使えるか?ですが)

などがあります。

 また、弁護士「個人」の経験として、

・ 医療関係の案件が多ければ、医者や医療関係者に色々尋ねた経験があり、また何かあったときに「色々聞いてみる」ことができる。

とか

・ 難しい交通事故の案件を扱った経験が多い人の場合に、交通工学鑑定(車がこのスピードで走ってくれば、衝突後、損傷がこれくらい大きくなる、というような物理的な分析など)の専門家と接点がある(以前にも依頼したことがある)。

とかそういうことがあります。

 なので、弁護士の「権限」とかそういうものではないけれども、弁護士の経験や人脈によって、普通レベルではなかなか出来ない調査(専門家に意見を求める調査など)ができる場合があります。

 このあたりは、私たち弁護士としては、日頃から、知恵を借りることができる(また、必要なときには、逆に法律的なことを教えてあげられる)知り合いをたくさん作っておくこと、依頼案件をする中で出来た他の分野の専門家とのつながりを大切にしていくことにより、「自分の調査能力」をレベルアップしていかなければなりません。
 私としても、「自分の調査能力」の面でも、皆様に頼って頂ける存在になるべく、日々努力していきたいと思っています。
 

       神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹



弁護士は何でも調査できるのか?~弁護士の調査能力、弁護士会照会など [弁護士業について]

 よく尋ねられることの一つに、

「弁護士さんって、他人の住所とか、貯金とか、何でも調べられるのですか?」

というのがあります。

 今日は、弁護士の調査能力についてお話ししたいと思います。

1 弁護士には「捜査」能力はない
 
 調査、といって、一番強力なものとして何を思い浮かべますか?

 そう、警察の「捜査」ですね。
 特に、いわゆる「ガサ入れ」(家や事務所などに対する、捜索、差押というやつです)などは、刑事ドラマなどでもおなじみです。
 タンスなどもひっくり返して無理矢理調べることができる(しかも、片付けずに帰ってしまうというアレです)。
 これは、「強制捜査」の一種で、警察や検察にしかできないことであり、しかも、裁判所が出す令状があってはじめてできることです。

 弁護士は「強制捜査」はできません。
 ですので、基本的に「調べられるのはいや」という相手に対して調べることはできないのです。

2 しかし、弁護士だからできる調査方法はある!
 
 では弁護士には、調査能力が全くないか、といえばそうではありません。
 
 受けた事件に必要なことであれば、いくつかの方法で、弁護士でない人には難しい調査ができることがあります。
 それを順に紹介しましょう。

3 住民票・戸籍の調査

 お金を貸したけれど返してくれない相手を訴えるために住民票を調べることなどができます。

 また、訴えたい相手がいるけれど既に死亡している場合などは、その相続人を調べるために戸籍を調査することもできます。

 ただし、あくまで、事件の処理のため必要な範囲で他人の住民票・戸籍謄本が取れるという話です。
 「あの人に隠し子がいるかどうか興味本位で調べてみたいから弁護士に委任して調べてもらう」というような「調査のための調査」はできません。

4 普通の文書・問い合わせによる調査
 
 これは別に弁護士だから、という特別な方法ではありません。
 
 例えば、亡くなったおじいちゃんの晩年のお金がたくさん無くなっていたという場合に、身近な人に使い込まれたんじゃないか?と疑ったとします。

 そのころのおじいちゃんの体や判断能力がどれくらいのものだったかを調べ、使い込まれる状況に合ったかを確かめたいということがあります。

 そんなときに、おじいちゃんの様子を見ていた人、例えば、出入りしていたヘルパーさん、介護事務所などに、文書や電話で、「そのころのおじいちゃんの心身の状況について教えて下さい」と尋ねるなどです。

 これは弁護士でなくても誰でもできます。
 しかし、プライバシーのこととか、紛争に巻き込まれるのがイヤとかで、普通に訊かれても「回答しません」という場合でも、弁護士が回答を求めると答えてくれる場合があります。

 弁護士ってそんなにえらいのか?と思われるかも知れません。

 が、「えらい」というわけではなく、紛争解決については、弁護士は弁護士法という法律上特別の役割が与えられた存在なので、そのことを信頼して回答してくれるということがあるのです。

5 弁護士会を通じての照会(23条照会)

 最近(平成28年10月19日)、これに関する最高裁の判決がありました。
 
 このニュース

(引用)
転居先照会、愛知弁護士会が敗訴 最高裁逆転判決
毎日新聞2016年10月19日 中部朝刊

弁護士法に基づく情報照会(弁護士会照会)の回答を拒んだのは違法として、愛知県弁護士会が日本郵便に約30万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(木内道祥裁判長)は18日、「回答を拒絶されても弁護士会は損害賠償請求はできない」との初判断を示した。その上で2審判決のうち日本郵便に1万円の支払いを命じた部分を破棄した。愛知県弁護士会が賠償を求めた部分の敗訴が確定した。


 弁護士会照会は、裁判の証拠を集めるため依頼を受けた弁護士会が公的機関などに資料の提出を求める制度。判決によると愛知県弁護士会は2011年9月、民事訴訟の和解金を払わない相手先に強制執行を求める男性から依頼を受け、日本郵便に相手先の転居情報の回答を求めたが、「郵便法の守秘義務がある」と拒否された。

 小法廷は同制度について「照会先は正当な理由がない限り、回答をすべきだ」と言及。その一方で「弁護士会に照会権限があるのは制度の適切な運用を図るために過ぎず、賠償請求の前提となる法律上保護されるべき利益はない」と判断した。

 小法廷は、弁護士会側が日本郵便に回答義務があることの確認を求めた請求については2審で審理が尽くされていないとして、審理を名古屋高裁に差し戻した。同会の弁護団は「最高裁は正当な理由がない限り回答すべきだと示した。意義ある判決だ」と述べた。日本郵便は「コメントは差し控える」としている。【島田信幸】
                                    (引用終わり)

 タイトルの通り、弁護士会が裁判に負けたという悲しい判決なのですが、中身はいいことも言ってくれています。

 このニュースにあるとおり、弁護士は弁護士会を通じて「照会」ができます。
 弁護士法23条の2という条文に根拠があります。
 それで、この「照会」のことを「23条照会」とも呼びます。

 弁護士が、弁護士会を通じて、事件に必要な調査を「公私の団体」相手にかけることができる、という制度です。

 ニュースに補足ですが、この最高裁判決(本文)は次のように述べています。

「23条照会の制度は,弁護士が受任している事件を処理するために必要な事実の調査等をすることを容易にするために設けられたものである。
 そして,23条照会を受けた公務所又は公私の団体は,正当な理由がない限り,照会された事項について報告をすべきものと解される」

 弁護士は、トラブルを裁判などで解決しなければならないわけですが、正しく解決するためには真実を知ることがとても大切です。
 なので、こういう制度があるのです。

 ですから、照会を受けた団体は(拒否する)正当な理由が無い限り答えるべきだ、と最高裁が言っているということです。

6 裁判を通じた調査

裁判の中で、相手方に対しては、
・ 証拠として、必要な書類を出すように要求する(「求釈明」と呼ばれます)
・ 裁判所から文書提出命令を出してもらう方法
などがあります。
 例えば、労災事故が起こって、会社に対して、事故に関係する会社内部の文書(調査報告書など)を出して下さい、などと求める場合などです。
 文書提出命令に逆らっても犯罪になるわけではありませんが、その文書に関係する部分について不利な判断がされる場合があります。

 また、裁判の当事者以外に対して(例えば、兄弟で相続について争っている場合に、亡くなったお母さんの預金を調べる場合。銀行など)、
・ 文書送付嘱託(口座の金銭の出し入れ履歴を出して下さい、など)
・ 調査嘱託(そもそも口座がありましたか?という質問など)
というのを、裁判所からしてもらうことがあります。
 「嘱託」というのは「依頼する」というくらいの意味ですが、裁判所からの依頼なので、銀行などもこれに応じて資料を出してくることが多いです。

 さて、裁判を起こさない限り上のような手段が採れないのか?という問題があります。
 そこで、「裁判にできるものか見込みが分からないけど、とにかく調べるために、裁判を起こしてみるしかない」という感じで裁判を起こす、という発想が出てきます。
 これはちょっとまずいです。
 最終的に勝ち負けがあるし、予想通りにならないこともあるのは裁判の常ですが、「勝負になるかどうかも分からない」裁判がたくさん起こされたら困る。裁判所もパンクするし、何より訴えられた人はたまらない。
 こういう不都合をなくすために「訴訟予告通知制度」というのがあります。

 「訴訟予告通知制度」というのは、裁判を起こしたわけではないけれども、起こすことを予告して、上に書いた「文書送付嘱託」などの調査ができるという制度です。
 その調査の結果、入手できた書類を見て、「これでは裁判は無理だ」と思ったら、訴訟をやめればよい、というものです。
 結果、「あてずっぽう」みたいな裁判が減り、ちゃんと根拠のある裁判が増える、ということを目指した制度です。
 この制度も、依頼事件によって有効に活用したいものです。


 以上、弁護士がどんな調査をするのか?について解説しました。

 何かの事件を依頼するときには、できるだけ自分で資料を集められる限り集めて頂き、弁護士に見せて頂くのがよいです。
 ですが、自分1人でできることには限界がありますから、

「どんな証拠を集めればいいでしょう?」
「それにはどうすればいいでしょう?」
「自分は何を? どこからは弁護士に任せていいか?」

ということも含めて、弁護士に相談して頂くのが良いと思います。

              神戸シーサイド法律事務所                             弁護士 村上英樹
   

 





 
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